修正型電気けいれん療法とは
1938年から行われている精神科専門療法です。専門の治療器(サイマトロン)を用いて、頭部(こめかみ)から約8秒程度の短時間、電気刺激を与えます。
脳を刺激することで、さまざまな症状を改善する治療法です。
当院では修正型と言われる方法で実施しています。
全身麻酔をかけて治療中は眠った状態なので、痛みなど苦痛は感じません。
身体的にけいれんが起きないように筋弛緩薬も使用します。
治療に関わるスタッフ
・精神科医・麻酔科医・内科医・看護師・薬剤師・臨床心理士・精神保健福祉士
どのような方が治療を受けていますか?
適応となる診断
うつ病、躁鬱病、統合失調症(緊張病型、妄想型)、パーキンソン病、身体・精神疾患に続発する気分障害、気分障害に関連する慢性疼痛性障害、悪性症候群
適応となる状況
- 迅速で確実な臨床症状の改善が必要とされる場合(自殺の危険、拒食、低栄養、興奮、錯乱など)
- 他の治療法の危険性がECTの危険性より高いと判断される場合(高齢者、妊娠、身体合併症など)
- 薬物療法の反応が不良であったが、ECTの反応が良好であった場合
治療までの流れについて①
主治医からインフォームドコンセント
当院のパンフレットを使用して、よりイメージがしやすいように説明致します
委員会へ導入について申請
主治医がECT予約票を作成し、委員会に適応の有無について申請します
他職種でカンファランスし検討
主治医以外の医師、看護師、薬剤師など他職種がカンファランスに参加し適応、リスクなど総合的に検討します
適応(承認)と判断した場合、実施に向けてスケジュールを決定。
ECT開始日に向けて、術前検査などスケジュールを決定し、
安心して治療過程が進められるようにパスを使用し説明致します
治療までの流れについて②
術前検査
安全に行うために入院して検査が必要です。約10日間、採血、検尿、心電図、心エコー、胸部レントゲン、歯科受診、眼科受診など
治療前日
麻酔を行うため、絶飲食が必要です。前日の夜(21時以降)から開始します。(当日の朝食は欠食となります)
治療当日
病棟からECT室に移動します。ベッドに寝た状態で心電図など治療に必要な電極を身体に貼っていきます。
麻酔薬、筋弛緩薬を使用するため、点滴を行います。
mECT実施
麻酔薬により眠った状態となります。
筋弛緩薬により身体のけいれんを抑えます。
治療器から電気刺激を与えます。
治療後
1時間ほどECT室で経過を観察します。病棟に戻って、昼食からは元の生活となります。
治療後について
- 治療効果及び持続時間には個人差があり、定期的に実施する必要があることもあります。
- 症状が改善した後も、その状態を維持するために薬物療法が必要です。
- 治療途中で、同意を撤回することができます。
副作用と安全性
治療直後に起こるもの
□ 頻脈、血圧上昇
殆ど全例でありますが、3~5分で消失します。
□ 不整脈
稀ですが心電図をみながら適切に対応します。
麻酔から覚めた後に起こるもの
□ 物忘れ、混乱
一時的に起こり、物忘れは4週間以内、混乱は1時間以内に改善するといわれています。
□ 頭痛、筋肉痛
軽いものが多く、鎮痛薬などで改善します。
安全性
死亡事故は1万人に1人(0.0001%)、治療8万回に1回とされています。
麻酔や身体合併症に関連した事故であり、mECT自体によるものは稀です。
安全を最優先に麻酔管理を行っていますが、医療は100%安全ということはありません。
治療を受けた方には
♡ 高齢でうつ症状により食事が摂取できない。 ⇒ もっとも効果が表れやすいとされています。
♡ 入院するのに抵抗がある。 ⇒ 薬物療法より早く効果が表れやすい。
♡ 脳は大丈夫か不安だ。⇒ 脳自体が損傷されることはありません。刺激による発作活動が重要です。